夢を楽しむ月花庵

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平安貴族の夢分析 感想

著者:倉本 一宏 / 発行所:吉川弘文館
発行日:2008年2月1日 / ページ数:259

平安貴族は「夢分析」をしていた

ほんとにタイトル通りであり、
平安時代でもう既に、自分自身のオーダーメイド夢分析ができていたのです。
この本は、「蜻蛉日記」や「更級日記」「古今和歌集」など、
平安時代に残された古典文学から、
夢に関する記述や歴史背景、人物像を検証し、
徹底的に脳科学や睡眠科学を駆使し、
心理学的な夢分析をしている本
になります。

「夢占い」と聞くと、オカルト感が強くて、
古代人の方がやってそうなもんですが、そんなことありませんでした。
むしろ「夢占い」が発展したのは、
数々の夢報告が散り積もった「統計」ができるようになった後の時代の方であり、 それがなかった平安時代の方が、
資料がないので夢分析をするしかなかったんだろうなぁと感じました。

私は古典文学にそんなに興味がなくて、
詳しくもなかったので、理解ができるかとても不安だったのですが、
かなり詳しく分かりやすく書かれていたので助かりました。
すんごい楽しかったです・・・!

ストイックな調査内容

徹底的な心理学的な夢分析、と書きましたが、
あまりにも徹底的だったので途中で笑えてきてしまいました。

ぶっちゃけかなり現代的で現実的で、夢の本なのに、夢がないような理論的な本です。笑
きっぱり、こうに違いない、疑問である。
という言い回し
を使っていることが多いので、
言い方としては優しくないけど、
理論的に、科学的にとらえたい方には入ってきやすい内容なのではないでしょうか。

ほんとに理論的な内容で、
頭がいい人がかいてる!って感じの印象でした(語彙力ない)
なのでその関係で自分はちょっと雰囲気に慣れるまで読みづらかったのですが、
古典文学に出てくる「夢」という単語を正確に数えたりと、
ここまでしっかり検証してる本はまだ他に知らないですし、
結果的にとてもよく分かったので、
平安時代の夢事情を知りたい方には非常に勉強になる本だと思います。オススメです!

当時の夢の使い方がおもろすぎる

この本ですごく印象に残った評論内容がありました。

それは「行事のサボりの口実にウソの夢を語った」という内容でした。
いいなぁ・・・会社行きたくないから、
怖い夢みたから休みます、って言うようなもん
ですよ・・・?

良くも悪くも、平安時代の貴族たちは、夢を都合のいいように利用していたのです。
この平安時代の時点では、夢の内容も大事な情報として重視され、
夢を人に話し、話され、いろんな判断や交流に使われてきました。
そういった時代の中で、悪い夢を見たからこの件はやめる、
というのが、普通にまかり通っていたようです。ほんとうらやまし・・・

また、僧侶に自分の代わりに夢を見てきてほしいと、おつかいのように頼んだり、
こんな夢を見たがどういう意味か、と僧やそれを職業とする人に、
夢解きを依頼したりと、本当に夢の話が盛んにおこなわれていたようです。
その分析の結果も、時代背景を考えれば
色々納得できる内容という解釈も書かれていて面白かったし、
また、意外とこの夢を見たら悪い事だ、良いことだ、というような、
現代で言う「夢占い」的な事はされてなかったのも驚きました。

夢の分析を盛んに行い、現行の問題や悩みにあてはめ、
臨機応変に現実世界で対応する。
もう、古代で既に、夢の扱いを分かってるじゃないですか。笑
だから、今研究が色々進んだ現代でも、どうして夢を見るのかという
「脳のメカニズム」や「睡眠の仕組み」くらいしか分かってなくて、
(こう書いてしまうと大したことないみたいで申し訳ないですが、
そんな気はないです。)
結局は現実世界に活用するなら、古代人と同じような「夢分析」
が一番何も難しくもなく実用的で、理に適っているって印象が残りました。

感想まとめ

まとめ:夢への考え方は古来から変わらない

近代で心理学が発展し、その中で復活した「夢分析」ですが、
既に古代人が行っていると思うと、
なんで伝わらずに忘れられてしまったのだろうなぁ
と、切なくなりました。
でも文化の発展はいつでも貴族や位の高い人が発展させていくもので、
この文化の発展の流れのどこかで、失うきっかけがあり、なくなってしまったのかもしれません。
武士とか、夢みたいな曖昧なもの信じる人が減ってそうで、
その武士中心の政治になったのも関係もありそう。
(正確な資料を見てないので偏見です)

夢を通して歴史的な背景を考えて、
想い馳せる事ができるのも、楽しいものです。

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平安貴族の夢分析