夢を楽しむ月花庵

図書室

あなたの心と未来がみえる 夢占い辞典 ルナ・マリア 感想

著者:ルナ・マリア / 発行所:ナツメ社
発行日:1998年12月10日 / ページ数:375

非常に柔軟な意味付け

この本は偶然の出会いで、見つけたから買った、というきっかけでしたが、
実際に辞書内容を読んでみると、しっかりとした夢分析の参考になり得る、非常に素晴らしい夢占い辞書でした。

特筆すべき部分は、一つのキーワードに対する柔軟で膨大な解釈です。
どれくらいかというと、キーワード1つに対し、
1ページの半分、または丸々1ページの解釈例を載せているほどです。
文字も若干小さめなので、情報量は相対的に他の本より増しています。
(ほとんどの本は数行の文章で済ませています)

そしてここのサイトでも採用している書き方である、
「良い意味の場合」と「わるい場合」のパターンをしっかり分けています。
一つの意味での解釈が難しいというのをしっかり伝えたい、
という本の目的が表れています。

きっぱりと単純に、気軽に夢占いをしたい、という方には、
ちょっと文章が長めなので疲れちゃうかもしれませんが、
意味の内容の決め方は夢分析の考えに非常に近いので、オススメしたい辞書の1つです。

考え方はフロイト寄り?

夢分析の考え方に近い意味付けをしている本書ですが、
ところどころの意味の付け方が、
やや心理学者のフロイト寄りだなと感じる部分がありました。
ほとんどの夢占い辞書はだいたい、同じ心理学者である、
ユングの考え方の元で作っている場合が多いです。

それはどういう事かというと、この本ではときどき、
エッチな方向の意味が最初に書かれているキーワードも多いです。
よく読むとそれ以外の意味もしっかり書いてありますが、
情報量が恋人関係や性的な意味なものに偏っている事があります。

これは、フロイトの理論的には合っている
という知識があればこの意味の限りではないというのはすぐ分かりますが、
そうじゃない人が見るとびっくりしちゃうかもしれませんね。

単刀直入に言うと、フロイトの夢判断には、
抑圧された性的欲動という考えを組み込む事が多く、
夢判断の場合は柔軟性に欠けるものでした。
穴や凹みは全て女、棒状のものは全て男と極端です。笑
(詳しくは割愛しますが、現代人や万人には当てはまりにくいというだけで、この考えは間違っているわけではない。)

ほとんどは柔軟な意味のある辞書として活用して頂ける内容ですが、
この本を利用する場合は、その点だけ考慮に入れておくといいかもしれません。
合わないと感じれば、そこだけ自分にとっての意味を考えるのが良いです。
逆に言うと、恋愛に関する事柄が日常的に思考にある方には、そのまま使いやすくて合うのではないか?と思った本でもありました。

時代に左右されにくい基本内容

1998年と少しだけ古い本なので、
スマホやゲームなどの、現代のデジタル関連の夢解釈にはあまり強くないです。
(執筆している現在、2022年)
デジタルコンテンツは進化がとても早いので、
どの本も時代で微妙に印象が変わってしまうためです。

パソコンや電話、カメラなどのキーワードも載っていますが、
98年当時は全て機械は別々で、
スマホのような一体型の端末はありません。

しかし、機械の仕組みや利用目的は現代にも通じます。

この本は、強みである膨大な解釈量により、
その時代に影響されやすいという弱点をカバーできている
ように思えました。
読む場合は、表計算アプリ、電話アプリ、カメラアプリ、
というように考えて良いと思います。
それらの意味に、スマホというのはどういうものかという意味を付加すれば、
現代的な価値観の元で、夢の意味を解釈できるかもしれません。

そして、前述で述べたように、それぞれ非常に詳しく書かれていますので、
ある程度融通の利く参考書になると感じました。
今読んでも、意外とそこまで意味の相違を感じませんでした。

他にも掲載された人体や行動、物品や動物など、
現代もそう印象が変わらないようなキーワードが多めに、
かつ詳しく掲載されており、基本的な夢判断の考え方を学べるようになっています。

感想まとめ

まとめ:丁寧な解釈例を元に熟考ができる「夢分析」の辞書

夢占いの辞書と言えば、自分で考えなくても、
スパッと判断を下せるお手軽なもの、って印象があったのですが、
この本は詳しく書き過ぎて、ぱっと見は簡単には見えません。

まるで本当に、自分が夢分析をする時に考えてるやり方、
思考回路を書きなぐったような感覚になっていました。
ですが言うほど読みづらいわけではなく、
いろんな意味の可能性が書いてあるため、
夢占い辞書のワクワク感は損なわれておりません。

どっちかというと、このサイトでの夢占い辞書の書き方に近いため、
この本を利用していれば、
なんとなく夢分析の考えが身に付くのではないか
と感じました。

やっぱり惜しいのは、フロイト的考えのキーワードの意味かなぁ。
けど逆に、ほとんどがユング派の夢判断の考え方で辞書を出している中、
めずらしくフロイト寄りの本に出会えたので、ちょっと嬉しかったです。笑

偶然の出会いの本だったけど、膨大な解釈量を隅から隅まで読むのがとても楽しく、とても丁寧で良い本でした。